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鳥井賀句さんレビュー(6/13レコ発ワンマンライブ)

レビュー音楽評論家、文筆業、ミュージシャン、音楽プロデューサー

 

13JUN
シクスシクス・ファースト・アルバム発売記念ワンマンLIVE@CCO下北沢

VO&GのアンカとG&VOの村瀬統也の2人のユニット、シクスシクスが6月9日に発売したデヴュー・アルバムの発売記念ワンマンLIVEを見に、下北沢のCCOに行ってきた。
場内は満員御礼。

去年彼らのLIVEを阿佐ヶ谷「ハーネス」で初めて見て気に入って、僕の主催する四谷「OUTBREAK」のイベント「地下室のメロディ」にも出てもらったし、7月26日には荻窪「CLUB DOCTOR」での<オーストラリアのPJハーヴェイ>こと、ペニー・イキンジャーの来日公演にも出てもらうことになっている。

シクスシクスの音楽を何といえばいいだろうか。「サイケ・ロック」、「アシッド・フォーク」…等と呼ぶことも可能だろうが、そういう枠決めよりももっと自由で自在に形を変えていく、万華鏡の模様のようなイマジネーションとエモーションが、彼らの音楽世界からあふれ出している。

まず彼らの大半の曲を作詞作曲しているアンカの歌に引き込まれてしまう。時にはセクシーな雌猫のように、時には幼い少女のように、自在に声を変えていく彼女の歌は、5分くらいのひとつの曲の中を、まるで鮮やかな熱帯魚のように、歌詞とメロディの間を自由に泳いでいくような感じを抱かせる。

歌詞も「静かな声がある、わたしの中に、瞬きもせずに、それを見つめている」、「わたしの気持ちに誰も誰もなれない、あなたの気持ちになりたい、なってみたいんだ」といった独白のようなつぶやきが歌われる。

そのアンカの繊細な歌世界に、ギターの統也は1曲1曲、様々に音色や強弱を変え、ノイズやトーンを加えながら、色を描いていく。殆どの曲がスローかミディアムの曲ばかりで、普通ならそんな白昼夢のような曲ばかり続けば、客も飽きてしまいそうなものだが、シクスシクスの歌世界は、じわじわと金縛りにかけるように、聴くものをその深遠な夢のような世界に連れ去っていくのである・・・

アンカはシンガーになる以前から女優としても活動していたというが、シクスシクスの1曲1曲の中で、彼女はその声と目力で、5分間のオリジナル曲の主人公を演じることができ、観客は彼女の歌という形のドラマに引き込まれていくのである。ずっと椅子に座ったまま、ギターを弾きながら歌い、派手なアクションも客を煽るようなMCもなく、ただ淡々と歌っているのだが、その歌の中で彼女は声の変化や目の表情や感情のコントロールだけで聴く者を魅了することのできる素晴らしい表現者だと思う。

アルバムもそんな彼らの魅力が十分感じられる秀作になっている。

文:鳥井賀句(音楽評論家)

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